つくば植物園:デンドロビウム・パルペブラエ

2025年3月9日のことだが,つくば植物園(茨城県つくば市天久保)を訪問した。

久しぶりに熱帯雨林温室にも寄り,デンドロビウム・パルペブラエ(Dendrobium palpebrae)などの花を見ながら歩いていていたところ,2025年3月16日~3月23日に開催予定の「つくば蘭展」の開催準備のために作業中のSさんと会い,しばらく話をすることができた。


Dendrobium palpebrae
デンドロビウム・パルペブラエ
Dendrobium palpebrae


私が知っている限り,Sさんは世界最高峰の野生蘭育成技能の保有者であり,その知識・能力・経験・熱意・工夫は,素晴らしいと表現するしかなく,まことに余人をもって代えがたいものがある。

つくば植物には世界最大数の「生きた標本」としてのラン科植物が収集・保存・育成されているのだが,もしSさんが存在しなかったとすれば,とっくの昔に枯死してしまった標本ばかりというようなことになっていただろうと思う。

一般に,ラン科植物の栽培は,人間の親が自分の子供である赤ん坊を育てる場合よりも何倍もの困難を乗り越え続けなければならないことが珍しくない。水と肥料をやっていれば,それだけで大丈夫というようなものではない。

そのSさんと話をすることができ,とても良かった。

3月16日から開催される「つくば蘭展」では,愛好家の方々が栽培している園芸種等の美しいランの花が展示されるのと併せて,つくば植物のコレクションである世界のラン科植物の中からも開花中の植物種が展示される。

つくば植物園のコレクションである野生のラン科植物の中には,無論,栽培された分け株として販売され,流通している植物種も多数ある。しかし,そのコレクションの中には通常は栽培不可能であり,絶滅危惧種として保護されているために流通していない貴重な植物種が非常に多い。それらの植物種は,つくば植物園の蘭展で見学するしかないものであることが珍しくない。

「つくば蘭展」というイベントは,そのような希少種の実物を観察できるとても貴重な機会を提供するものであり,そのことが,日本国内で開催される類似イベントの中でも際立って優れた特色となっている。



 国立科学博物館筑波実験植物園(つくば植物園)



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