水戸市元吉田町:薬王院(その1)

過日,天台宗・吉田山薬王院(茨城県水戸市元吉田町)を参拝した。本尊は,薬師如来。

薬王院は,延暦年間に桓武天皇の勅願によって伝教大師最澄が創建したと伝えられる古い寺院。薬王院の参道入口に建立されている石の門柱にも「桓武帝勅願処」と刻まれている。
薬王院のホームページによれば,「常陸三の宮の吉田社の神宮寺として国家安全の祈祷をつとめ,この地方の豪族である常陸大掾氏と密接な関係をもって,その帰依と同時に保護をうけてきた」とのこと。ここでいう「吉田社」とは,吉田神社(茨城県水戸市宮内町)のことを指す。これは,神仏習合の時代に関する説明であり,現在では,神佛分離によりそれぞれ完全に独立している。
なお,薬王院の寺号は,現在でも神宮寺のままではないかと思われるのだが,確認していない。

薬王院の本堂は,室町時代の建築様式を残す極めて貴重な文化財の1つであり,国の重要文化財に指定されている。かつての本堂は大永7年(1527年)に焼失し,享禄2年(1529年)に 当時の領主である江戸通泰(藤原通泰)の支援により再建され,江戸時代には徳川光圀によって大規模な改修工事が行われた。現在の本堂は,昭和43年に解体修理と調査等が行われ,その調査結果を踏まえて再現されたもの。更に,令和5年,屋根を葺いている銅板等の改修工事が行われた。
とても素晴らしい威厳のある建造物だと思う。

薬王院の仁王門は,江戸時代に建立されたものであり,茨城県の文化財に指定されている。
薬王院に安置されている木造薬師如来坐像と十二神将像は,茨城県の文化財に指定されている。
薬王院の仁王像(木造金剛力士立像)は,水戸市の文化財に指定されている。
薬王院境内にある松平亀千代丸五輪塔は,水戸市の文化財に指定されている。
薬王院回向堂前にある四脚門は,水戸市の文化財に指定されている。

現在のところ文化財保護法に基づく文化財の指定を受けてはいないが,平安時代の作と推定される木造の仏像(立像)が3体あり,宗教学上では無論のこと,考古学上及び歴史学上においても極めて価値の高い有形文化財だと考えられる。長らく秘仏とされてきたため,それらの仏像の存在はあまり知られていないが,現在では,薬王院のホームページ上でその写真が公開されている。最澄と直接の関係をもつ仏像である可能性がある。
茨城県当局は,必要な調査・研究を尽くした上で,文化財として指定すべきだと思う。


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薬王院入口付近


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参道


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仁王門


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仁王門側面


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仁王門の間を通して見える参道の続き


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本堂の方から見た仁王門


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薬王院の文化財の説明板


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薬王院の境内案内図


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薬王院本堂


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薬王院本堂側面


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薬王院本堂の説明板


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薬王院本堂解体修理の説明板


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水戸市指定の保存樹・イチョウ


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保存樹の指定標


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保存樹林地の指定標識



 薬王院

 茨城県教育委員会:薬王院本堂

 茨城県教育委員会:薬王院仁王門



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