小田代原のヒヨドリバナ

2024年8月2日のことだが,戦場ヶ原(栃木県日光市中宮祠)を訪問した。

赤沼駐車場から出発して自然観察路を青木橋経由で小田代原の休憩所まで歩き,いま観られる動植物を観察した後,小田代原の休憩所から低公害バス(有料・大人500円)に乗車して赤沼駐車場に戻った。

小田代原の各所でヒヨドリバナを見た。小田代原のヒヨドリバナには,三輪の葉と互生の葉が混在している個体や対生のようにも見える葉をつけている個体が多い。非常に面白い。

ところで,一般に,ヒヨドリバナの分類に関しては異なる見解が存在し,そのために(分類学上の立場の相違により)異なる学名を用いることがある。

何かと面倒な植物なのだが,ヒヨドリバナの学名に関し,YListでは,「Eupatorium makinoi T.Kawahara et Yahara」を標準学名としている。
Kewでは,「Eupatorium makinoi T.Kawahara & Yahara」を「Eupatorium chinense L.」の異名(Synonym)としている。Flora of Chinaの見解もKewの見解と同じ。


Eupatorium chinense


Eupatorium chinense


Eupatorium chinense


Eupatorium chinense


私見としては,古代に渡来人と一緒に史前帰化植物としてやってきたシナヒヨドリバナ(Eupatorium chinense)と歴史時代(特に江戸時代以降)に中国大陸から更にもたらされた近縁種との間の人工交配品の子孫または自然交雑の子孫が多いために中間的な様相を示す外形的形質とDNAをもつ複合体が存在しているような結果となってしまっているのではないかと考えている。これと関連して論説のようなものを書いてみたこともある。

一般に,『万葉集』や『懐風藻』の中で表現されている植物の中で実際に日本国の国土に存在するものの大部分は,古墳時代~奈良・平安時代頃の帰化植物またはそれよりも前の時代に渡来した史前帰化植物なのではないかと推測される。

日本国の偉大な植物学者の多くが日本国において有用植物として扱われてきた植物の中で帰化植物の可能性が高いものを対象として研究し,論文を公表してきた(白井光太郎『植物渡來考』(岡書院,昭和4年),北村四郎『北村四郎選集Ⅱ 本草の植物』(保育社,昭和60年)など参照)。
最近では,そのような観点をもつ若手研究者が多いと言えるのかどうか,よくわからない。

しかし,可能な限り豊富な一般教養を基礎として,各人各様の自分なりの大まかな仮説をもたないでDNA研究やAIによる推論を実行してみても,研究成果として得られるところは乏しい。

無論,一般に,仮説は仮説に過ぎないので,証明できなければ捨て,別の新規の仮説を立てることのできる脳機能を具備している必要性もある。
そのような脳機能を実装し,それを努力の蓄積によって連続的に稼働させ,その結果として,次第に質的に変容・高度化する脳内の知的能力のことを一般に「知性」と呼ぶ。

このタイプの脳機能は,(現代の計算理論を前提にする限り)AIには実装できない機能の一つだと言える。
一般に,現在普通に考えられているようなレベルの「学習」理論を基礎とする限り,生体の脳機能またはAIシステム内の機能が質的に変容・高度化することはあり得ない。

そのような脳機能の質的な変容・高度化を実体験するためには,普通の人だと60年以上の努力の継続を必要とする。それゆえ,若い世代のAIエンジニアには全く想定不可能な状態だと言える。
つまり,彼らは,本当は何もわからないまま,蜃気楼のような「架空の知性」を追い求めている哀れな人々であり得る。

そして,そのような最初から実体のないものに巨額の投資をするとどのようなリスクがあるかを冷静に計算し,予め防護策を講じておくことができない投資家は,詐欺師のような人々に煽られて巨額の出資や投資をしてしまうかもしれない。その結果としてどういうことになったとしても全部自業自得だと言うしかない。

ちなみに,単なる反復に過ぎない思考作業の類は,機械化または自動化に馴染むので,そのようなものはシステム化され,人間の労働ではなくなってしまうかもしれない。そのようになるまで人間がやっていた仕事を代替するGPTのようなサービスは,誰でも利用可能なものなので,差別化のための武器としては全く使えない。一般に,「自分だけが使える」(=「他の者は誰も使用できない」)という状況が絶対的に確保されていない限り,どんなに優れた道具があっても自分を優位にするための道具とはならない。
つまり,そのようなGPTサービスが普及すると,地球上の全員が「敗北」となるだけで,誰も優位を獲得できない。



 好奇心の植物観察:ヒヨドリバナの対生、輪生、互生葉序

 三河の植物観察:ヒヨドリバナ 鵯花

 Flora of China: Eupatorium chinense Linnaeus



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