ヤマウラギンヒョウモン?
2024年7月20日のことだが,戦場ヶ原(栃木県日光市中宮祠)を訪問した。
赤沼駐車場からゆっくりと歩きながら進み,青木橋付近に到達したところで雲が広がりポツポツと雨粒が降ってきたので,引き返すことにした。それでも,約2時間半ほどの間にかなり多種類の動植物を観察できた。幸運だったと思う。
湯川沿いの木道を歩いていたところ,ホザキシモツケ(Spiraea salicifolia)の花にウラギンヒョウモンの仲間の蝶が舞っているのが見えた。ウラギンヒョウモンは,かつては単一の生物種として「Fabriciana adippe」との学名が与えられていた蝶なのだが,現在では,遺伝子分析を基礎とする系統分類の見直しにより亜種を細分化する考え方が支配的になっているようだ(新川勉・石川統「分子系統による日本産ウラギンヒョウモン3種と形態」昆虫と自然40巻13号(通号532号)4~7頁(2005年)参照)。
ウラギンヒョウモンに関し,特殊な地方型亜種は別として,日本国の本州に存在する亜種としては,ヤマウラギンヒョウモン(Fabriciana kunikanei)とサトウラギンヒョウモン(Fabriciana pallescens)の2種に分けて考える見解が優勢になっているように見える。将来どうなるかはまだよくわからないけれども,現時点では,この考え方に従うことにした。
一般に,ある外形的形質をもつタイプとある遺伝子特性をもつタイプとの対応関係が必ずしも明確ではないことがある。そして,現実に存在する特定の蝶がサトウラギンヒョウモンに該当するのかヤマウラギンヒョウモンに該当するのかを同定・判別することに関しても,必ずしも容易なことではない。
よくわからないなりに一応検討してみた。たぶん,ヤマウラギンヒョウモンの範疇に含まれる個体なのだろうと判断することにした。ただし,確実ではない。
なお,一般に,日光市とその周辺一帯では,オオウラギンスジヒョウモン(Argyronome ruslana)が多いとされているけれども,私が観た個体は,下翅裏側の斑紋の特徴から判断すると,オオウラギンスジヒョウモンではない。
遺伝子を基礎とする生物種の分類と外形的特徴を基礎とする生物種の分類とは,もともと観点と判断基準が全く異なる。
それゆえ,それぞれの基準によって識別・特定されたタイプ相互の対応関係が明確ではない場合があり,本質的に明確にできない場合さえある。
例えば,外形的特徴が全く同じまたはほぼ同じであり,個体差を考慮すると外形的特徴に差異が存在しないと判断され得るグループの中に顕著に異なる遺伝子特性をもつ複数のタイプのグループが含まれる場合,遺伝子により分類されたタイプと外形的特徴により分類されたタイプとの対応関係は最初から存在しない。
このような問題は,AI技術の応用によっても解決できない。
なぜなら,地球上に存在する全個体を捕獲して遺伝子分類しないと(関連AIシステムの内部処理であるマッチングと確率計算のための判定基準またはサンプルという意味での)完全なマップを形成することができないからだ。
そして,仮に(対象となる仮定的な生物種の地球上の全個体を捕獲し,殺して全遺伝子データを収集し)そのようなマップを作成できたとしても一般人が遺伝子の比較によって種を特定するための手段をもっていないのが普通なので,そのようなマップは何の役にもたたない。
そればかりか,そもそも,完全なマップを作成するために全個体を捕獲して殺し,遺伝子標本にしているので,遺伝子マップ完成時には(生きた生物種としては)当該の種が絶滅してしまっており,(マッピングの対象とすべき自然界の生きた対象が存在しないという意味で)マップを作成した意味(目的)が自動的に消滅してしまうということになる。
仄聞するところによると,特定の生物種の遺伝子標本を作製するために特定の地域内に存在する全個体を捕獲して殺してしまうような者(=趣味的なマニアではない者=どちらかというと専門的知識をもつ者)が存在するらしい。
競合する研究者等に1個の標本たりとも与えないようにするという目的のために,自分だけが標本を獲得しながら全個体を絶滅させるというようなこともあるのかもしれない。
いずれにしても恐ろしい時代になったものだと思う。
競合する研究者等に1個の標本たりとも与えないようにするという目的のために,自分だけが標本を獲得しながら全個体を絶滅させるというようなこともあるのかもしれない。
いずれにしても恐ろしい時代になったものだと思う。
このような(遺伝子標本を獲得するという目的のために)生物種を積極的に絶滅させる行動と関連して,動物学の分野において遺伝子分析のための標本採取をする際の行動準則または倫理基準が存在するのかどうかは知らない。
しかし,何らかの異常性格や特異な執念のようなものが強固に存在する場合,仮にそのような行動準則や倫理基準が存在したとしても遵守されることはないだろう。
そうでありながら,圧倒的多数のまともな研究者等に対して倫理研修等を強要しても,何やら意味不明で反生産的な無駄を強要するだけになることが確実だ。
そもそも,(当たり前のことだが)その分野において最も有能な研究者は,倫理研修等を企画し,そのテキスト等を作成する担当者よりもはるかに優秀な者であるのが普通なのだが,そのような最も有能な研究者が相対的に愚劣な者の思想や判断にどうして従わなければならないのかが全く理解できない。
とりわけ,倫理研修等の担当者が愚劣な者であったとしても,担当者自身が被担当者の側から適格性審査を受けることがないし,適格性を保証するためのデータが公表されているわけでもないので,担当者としての当該業務領域において万人が認める程度の卓越した能力,十分な経験,平等な思考の持主であること,職務遂行上の適正性及び人間としての信頼性が全く保証されていない。無論,当該担当者の身辺調査やクリアランスが実施されているわけでもない。研修用教材等を作成する組織・企業等においても全く同じ。特に,それらの研修用教材等を作成する組織・企業に関し,会計検査院のような権威ある監査機関による監査が定期的に実施されているということを聞いたことがないし,雇用されている従業者の労働環境に関して労働基準局等による査察が実施されたということを聞いたこともない。加えて,倫理研修用の教材等が第三者の知的財産権(著作権,意匠権等)を侵害していないかどうかが常時厳格に検査されているということを聞いたことがない。
まして,万が一にも,当該倫理研修等を強要しようとする組織が特定の思想団体,宗教団体または政治団体,反社会的組織,特定の外国のエージェント等の事実上の支配下にあるというような事実が存在するような場合には,そのような研修担当組織の存在それ自体が日本国憲法に反する可能性があるというだけではなく,(思想の自由,学術研究の自由という観点からは)現世の地獄のような状態がそこに存在していることになる。
そこらへんのことはタブーになっているのかもしれないけれども,公開されている資料等を調べればすぐにわかることなので一応調べてみるだけの価値はあるのではなかろうか。もっとも,公安当局は,誰から言われなくても既に調べていることだろう。
まとめると,圧倒的多数を占める善良な関係者に対して倫理研修等を強要しても,当該組織の執行部に対する反感を醸成し,当該組織の帰属意識を希薄化させるだけなので,その種の倫理研修等は全面的に廃止したほうが良い。
では,犯罪行為の場合を含め,著しい非違行為が適正な証拠によって確定され得る場合にはどうしたらよいのか。特に,特異な人物による確信犯的な行動に対してはどう対処したらよいのか。
特異な人物に対しては,(関係する自治体の条例に定める罰則を含め,適用可能な関連刑罰法令の条項の違反行為があったときは)裁判所の判断に基づく刑罰をもって対処すべきだ。
確信犯であっても関連する処罰条項を適用して適正に処罰されるべき者は,裁判所の判決に基づき処罰されるべきだ。
極めて特異な人物であっても,その者の行動がそもそも犯罪行為を構成しない場合,または,何らかの犯罪行為を実行したということが証拠によって証明されない場合,その者は,「特異である」という理由だけで差別的な取扱いを受けるべきではない。
あくまでも一般論だが,ある時点において特異に見える者が本当に特異なのかどうかに関しては,当該時点における社会的評価基準によるべきではないことがあり得る。
例えば,ガリレオ・ガリレイは,当時の最も権威ある社会的評価基準によれば異端者(=悪魔)であったわけだし,それゆえ,当時のバチカンもそのように判断したのだが,現在では,ガリレオ・ガリレイが自然科学史上の偉大なる天才の一員であったことを疑う者はいない。比較的最近になって,バチカンは,過去における自らの誤りを認めた。
他方,一般論として,民間においても,(倫理研修という名の)事前抑制には非常に大きな弊害がある。
原則として,倫理研修という名の(圧倒的多数の善良な関係者を犯罪者予備軍として扱うような非人道的で名誉棄損的・侮辱的または侮蔑的な)倫理研修によるのではなく,事後対応によるべきだ。
一般に,公法学の分野においては「国家権力による私人に対する事前抑制」には否定的または消極的な見解が多い。
このことは行政機関それ自体ではない行政法人や民間組織による私人に対する事前抑制でも完全に同じであるのにそのことに気づいていない法律家があまりにも多すぎるように見える。
蝶鳥ウォッチング:ウラギンヒョウモン
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