イヌトウバナ

2024年7月5日のことだが,戦場ヶ原(栃木県日光市中宮祠)を訪問した。

戦場ヶ原を一周するコースを歩き,いま見られる動植物を観察した。

林の中を通る木道を歩いて移動中,木道脇の林床などでイヌトウバナ(Clinopodium micranthum)の花が咲いているのを見た。とても小さな花なので,気にかける人はほとんどいないだろうと思う。


Clinopodium micranthum


Clinopodium micranthum


Clinopodium micranthum


(追記)

ヒロハヤマトウバナ(Clinopodium multicaule var. latifolium)の可能性も検討した。

奥日光では,中禅寺湖畔で採取された標本(国立科学博物館収蔵・萩庭丈壽コレクション)があるので,その標本画像と比較検討し,私が戦場ヶ原で観たものはヒロハヤマトウバナではないと判断した。
なお,ネット上ではヒロハヤマトウバナとして同定している写真を多数見つけることができるが,そのような写真の中には明らかに誤認と判定できるものが含まれている。

奥日光における過去の植生調査結果を調べてみると,奥日光にはイヌトウバナが広く分布していることになっている。これに対し,ヒロハヤマトウバナの分布に関しては,吉川正人・今福寛子・星野義延「奥日光千手ヶ原におけるササ消失後の林床植生の分布」日本緑化工学会誌39巻3号368~373頁(2014年2月)の中で千手ヶ原のハルニレ林の林床にあるとの記載があるほかは,分布の記録が見当たらない。

戦場ヶ原~小田代原において一般的に見られるものは,基本的にはイヌトウバナだろうと考えられる。



 松江の花図鑑:イヌトウバナ(犬塔花)



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