自宅のラン:アワチドリ
自宅の庭で栽培中のアワチドリが開花中。
アワチドリは,これまで,Kewの分類ではウチョウラン(Hemipilia graminifolia (Rchb.f.) Y.Tang, H.Peng et T.Yukawa)と同一種ということになっていたが,YListではウチョウランの変種として「Hemipilia graminifolia (Rchb.f.) Y.Tang, H.Peng et T.Yukawa var. suzukiana (Ohwi) Y.Tang, H.Peng et T.Yukawa」との学名が与えられており,Kewの分類も改められたようだ。
ちなみに,ウチョウランの学名に関しても,従来は「Orchis graminifolia (Rchb.f.) Tang & F.T.Wang」または「Ponerorchis graminifolia Rchb.f.」が使用されてきたけれども,現在では,「Hemipilia graminifolia (Rchb.f.) Y.Tang, H.Peng et T.Yukawa」と改められた。これにより,「Orchis graminifolia」及び「Ponerorchis graminifolia」は,「Hemipilia graminifolia」の異名(synonym)となった。
ところで,属名である「Hemipilia」の和名は,「ニイタカヒトツバラン」。1枚葉であることを特徴とするラン科植物の一種とされている。
しかし,1枚葉だけのウチョウラン及びその変種は存在しない。同じ属に属するとして分類されているヒナラン(Hemipilia chidori (Makino) Y.Tang, H.Peng et T.Yukawa)も同じで,基本的に,1枚葉だけのものはない。
現在の分類は,遺伝子分析を基礎としているので,系統分類それ自体は正しいのだろうが,1つ葉ではない植物種の属名に「ヒトツバ」を構成要素とする和名をあてることは,(大きな誤解を生むという意味での)不適切性があり,商品としての植物種苗の流通と消費者保護という観点からは(消費者の誤認が必至になるという意味で)誤っている。
一般に,生物分類学者が法学にも精通していることは稀なので,適切な命名制限のための国家制度上の仕組みを構築すべきだろうと思う。思いつきだけで命名できる時代及び無条件で先例踏襲しなければならない時代は既に過去のものだ。適切に影響評価を実施し,必要に応じて適切な修正や改廃が行われなければならない。
属名の和名「ニイタカヒトツバラン」を別の呼称に改めるべきだろうと考える。
動物分類学の分野では,(差別の問題を含め)命名が及ぼす社会的な悪影響を考慮し,学名等を改めた例が複数存在する。例えば,「メクラガメ」が「カスミカメ」に改められ,「イザリウオ」が「カエルアンコウ」に改められた。
この記事へのコメント