本庄市児玉町小平:成身院と百体観音堂(その1)
2024年4月初旬のことだが,真言宗豊山派・平等山成身院(埼玉県本庄市児玉町小平)を参拝し,日本三大さざえ堂の1つとして知られる百体観音堂を訪問した。
成身院の本尊は,不動明王。
成身院の百体観音堂は,児玉霊場第一番札所となっている。
本庄市観光農業センター前の駐車場にクルマを停め,同センターで受付の手続を済ませてから,同センターの担当者の方の案内で百体観音堂の建物前まで移動し,説明を受けた。
私が訪問した時にはちょうど桜が満開で,桜の花や山茱萸の花にはメジロ(Zosterops japonicus)がやってきていた。
説明を受けたあと,百体観音堂内を拝見した。担当者の方の対応は,とても親切・丁寧だった。
百体観音堂は,天明3年(1783年)の浅間山大噴火による犠牲者を弔うため,寛政7年(1795年)に元映上人によって建立された御堂。
百体観音堂の建物,百体観音堂正面の大鰐口,百体観音堂前に建立されている唐銅造大日如来坐像,百体観音堂内に安置されている成身院三仏は,本庄市の文化財に指定されている。
百体観音堂の構造は,「さざえ堂」と呼ばれる独特の構造をしており,一方通行で各回の回廊を右回りに回りながら次第に上の階に移動し,最上階からは別の階段を下りて最下段まで降りるようになっている。
その構造を理解してしまえば実に素朴な構造だということがわかるのだが,このようなものをよく考えついたものだと感心した。
観音堂の建物と観音像は,明治21年(1888年)の火災により焼失し,その後再建されたもの。
建物の外観及び内部構造は創建時と同じとされているが,観音堂内の観音像は創建時のものとは異なる。実際に拝見してみると,日本国内の著名な仏像を模したものだということを理解した。
ただし,観音堂内に安置されている三仏様(薬師如来・阿弥陀如来・釈迦如来)像は,元は成身院の三仏堂の本尊だったもので,三仏堂が老朽化したため,現在では観音堂内に安置されている。薬師如来像は寛正7年(1466年),阿弥陀如来像は応永12年(1405年) の作,釈迦如来像は応永12年(1405年) の作とのことで,貴重な文化財だと言える。
本庄市観光農業センター
人力車
本庄市観光農業センターの方から見た百体観音堂
百体観音堂前の石段
百体観音堂正面
大鰐口
百体観音堂正面の彫刻(一部)
百体観音堂側面の装飾(一部)
百体観音堂内部の様子(一部)
同上
天井画(一部)
薬師如来・阿弥陀如来・釈迦如来
護摩壇
唐銅造大日如来坐像
由来伝承の石碑
地蔵尊
南無大師遍照金剛
鳥獣慰霊塔
文化財の説明板
百体観音堂の説明板
メジロ(Zosterops japonicus)
同上
枝垂桜
浅間山大噴火の際には,天明泥流が発生した。
この泥流は浅間山から吾妻川を流れ下り,利根川を経由して江戸川河口行徳付近まで至ったという。その間の距離は約200km以上。かなりの高速で流れ下ったようだ。
中央防災会議災害教訓の継承に関する専門調査会『1783 天明浅間山噴火報告書』(平成18年3月)によれば,天明泥流の際に亡くなった人々の数は1624人,流失家屋の数は1151戸,焼失家屋の数は51戸,倒壊家屋の数は130戸余りと推定されている。
あくまでも一般論だが,現代においても天明と同様の大噴火が起きると,同様の巨大泥流が発生するリスクは存在している。
もし天明の泥流と同規模またはそれ以上の規模の大泥流が現代に発生した場合,河川敷及びその近隣の無人または人口密度の低い低地だけではなく,(現代の護岸堤等を破壊して隣接する低地の居住地や旧河道上に存在する市街地を流下する場合を含め)江戸時代当時には水田や湿地だったけれども現代には宅地開発等により人口密度の高い市街地等になっている低地を泥流が直接に流れ下ることがあり得ると考えられることから,その被災者の数が何万人にも及ぶ可能性がある。
それだけではなく,大規模な土石流により,利根川流域に設置されているダム・貯水施設・灌漑施設・護岸堤・上下水道施設・農業用水路・発電施設・交通網等が破壊され,深刻で再起不能なレベルの大被害を発生させる可能性がある。
関東地方の例ではないが,より古い時代の超大規模自然災害の例として,縄文時代には,九州の火山が大噴火し,その影響により西日本の広域が物理的に破壊され,大絶滅が発生したということが知られている。
日本国は火山国なので,日本列島で生きようとする限り,そのような大規模自然災害による絶滅的な被災という事態と直面することを避けることができない。
一般に,自然の脅威に対して人間は無力だ。少しも偉くない。それゆえ,科学によって自然界を征服できるなどと傲慢なことを考えることを避け,常に謙虚でなければならないと思う。
本庄市観光協会:成身院百体観音堂(さざえ堂)
やんば天明泥流ミュージアム
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