深谷市本田:鹿島古墳群(その1)

2023年2月のことだが,過去に何度か鹿島古墳群の所在地(埼玉県深谷市本田)を再び訪問した。

この古墳群所在地の管理状況はかなり悪く,公的に紹介されているような史跡公園ではない。
古墳群所在地の敷地内の陽地にはセンダングサ(Bidens)の類が密生しているため,ズボンに尖ったカギのある種子がいっぱいつくことを覚悟しないと古墳を見学できない。本来の散策路も既に草に埋もれて消滅しているので,過去の資料等に基づいて推測しながら歩くしかない。説明板は朽廃状態になっているものが大半。古墳群所在地の東側にあるはずの菜の花畑の区画には,ナノハナがほとんどないのではないかと思う。確認できるのはセンダングサの類ばかり。
ヒガンバナ(Lycoris radiata)も植栽されているとのことなのだが,かなり悲惨な状態となっている。お世辞にも花畑とは言えない。そのあたりの散策路は曖昧になってしまっている。明確な道があった当時の図面がなければ,本当は散策路があるということさえ全く認識できないレベルになっている。
古墳群所在地の北東隅にあるロウバイ(Chimonanthus praecox)の植栽地だけは現存しているけれども,記念植樹のせいかどうか,素人仕事としか評価できないレベルで過度に密植しているので,いずれ枯死する個体が続出し,廃滅することになるだろう。

夏の間には,特に古墳所在地の西側部分でオオスズメバチ(Vespa mandarinia)が飛行しており,とても危険。そのため,何度訪問しても古墳を丁寧に見学できなかった。

いろいろと考えた上で,2月の最も被害が少ないだろうと推測される時期に再訪し,結果的にはセンダングサの類の種子のためにズボンがひどい状態になりながら,とにかく頑張って踏破した。

ただし,この日に見学したのは史跡公園として公開されている区画だけであり,住宅地内にある古墳の近くには寄っていない。また,ざっと見て墳丘が既に消滅していると理解した古墳には近寄っていない。

何回かに分けて,この日に見学した結果としての記録の一部を紹介しようと思う。

なお,古墳の附番に関しては,埼玉県教育委員会編『鹿島古墳群』(昭和47年)には発掘調査した古墳(=現在では隠滅した古墳)の番号しか記載されていないので,他の関連資料等に基づき推定した附番を用いることにした。

鹿島古墳群の90号墳の所在地が現況のどこに該当するのかは,正確にはよくわからないのだが,ロウバイの林のあるあたりが該当するのではないかと思う。なお,ロイバイの林の敷地及びその周辺には墳丘らしい地形は見当たらない。

このブログ記事内にある古墳の番号は,現行の深谷市遺跡地図上で表示される番号と一致している。


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古碑


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古墳群所在地北東隅付近に植栽されているロウバイ


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ロウバイ植栽地付近の遊歩道現存部分
(90号墳所在地付近?)


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駐車場付近から見た94号墳
(右奥はロウバイの植栽地)


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東の方から見た94号墳


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北の方から見た94号墳


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北東の方から見た94号墳


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南の方から見た94号墳


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鹿島古墳群南東隅付近
(現在道路敷となっている場所が30号墳と31号墳の所在地)


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同上


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同上


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鹿島古墳群東側入口付近の様子


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現地案内図


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案内図付近から見た古墳群所在地南東隅付近の様子


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北の方から見た93号墳


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北西の方から見た93号墳


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南の方から見た93号墳


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南東の方から見た古墳群所在地南東側隅付近の様子


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注意の表示


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古墳群所在地東側の遊歩道現存部分
(左手は92号墳・中央は89号墳・右手は91号墳)


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東の方から見た92号墳


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92号墳脇にある説明板


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北の方から見た92号墳


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西の方から見た92号墳


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92号墳の墳頂の石祠


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南の方から見た92号墳


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北西の方から見た92号墳と93号墳


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北の方から見た91号墳


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北東の方から見た91号墳


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東の方から見た91号墳


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南東の方から見た91号墳


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91号墳の墳頂にある明神碑


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南の方から見た90号墳所在地付近(隠滅)


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東の方から見た89号墳


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北の方から見た89号墳


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北西の方から見た89号墳


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西の方から見た89号墳


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南西の方から見た89号墳


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南の方から見た89号墳,91号墳,92号墳,93号墳
(右手前付近が95号墳所在地?)


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南東の方から見た89号墳,93号墳
(左手前付近が95号墳所在地?)


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北西の方から見た95号墳所在地付近?


塩野博『埼玉の古墳 大里』(さきたま出版会,2004年)の302頁にある図では,87号墳が2箇所記載されている。重複か誤記なのだろうと思われる。古墳の森のサイトにある写真から判断すると,南側にあるものが86号墳だと判断可能なので,北側にあるものが87号墳に該当すると考えられる。深谷市遺跡地図では,北側にあるものが87号墳,南側にあるものが86号墳となっている。
深谷市遺跡地図上で表示されている番号に一応従うこととした上で,『埼玉の古墳 大里』の図にある番号も(北側にあるものを87号墳aとし,南側にあるものを87号墳bとして)付記することにした。
なお,いずれもその墳丘は掘削により消滅していると考えられる。図面上では墳丘があるように記載されているので,調査時後に掘削されたのだろう。


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南の方から見た87号墳(87号墳a)の所在地付近


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西の方から見た86号墳(87号墳b)の所在地付近
(右手前は88号墳)


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88号墳近影


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北東の方から見た86号墳(87号墳b)の所在地付近


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同上


実際には深谷市の予算(歳入・歳出)を丁寧に調査していないので正確なところはわからない。
しかし,鹿島古墳群の現況を見る限り,「深谷市には鹿島古墳群を維持管理するための予算を確保することが無理なレベルまで市財政が悪化している」と悪口を言われても仕方がないような状況にあると言わざるを得ない。
そのような汚名・屈辱の発生を防止するためにも,深谷市当局に対しては鹿島古墳群の史跡公園としての再整備を迅速かつ適切に実行することを要望する。

あくまでも一般論として,「重要な遺跡などの文化遺産を維持管理できなくなっている」という事実は,いま話題となっている「将来消滅する見込みのある自治体」となる可能性を示す重要かつ顕著な指標の1つであるかもしれない。
そのような指標を基準として,民間の格付け機関は個々の自治体の魅力度や将来性等を評価することになるだろうし,また,生成AIサービス等もそのような魅力度や将来性の評価を自動処理・自動実行するようになるだろう。

他方,将来において「多数の自治体が現実に消滅した後にはどうなるか」は誰にもわからない。

一応現時点で推測してみると,完全消滅前の移行時点(社会が崩壊しているけれども住民は存在する状態)では,地方自治法などの関連法令を全部改正した上で,かつての徳川時代の天領と同じく当該自治体を国直轄地とし,地方議会は停止,徳川家旗本と同様に国家公務員を知事及び上級公務員として派遣するようにするしかないかもしれない。財政的に破綻しているのに,当該自治体の議員歳費と上級地方公務員の俸給を支払うことなどできない。
しかし,もしその段階まで到達しているとすれば,日本国は既に終わっている。

次善の策として,市町村の大規模再編を再度実施するということがあり得るし,これが最も現実的な方法だろう。
この場合,吸収合併される自治体の地方議会と地方行政組織が消滅するので,少なくともその分の人件費は削減できる。
ただし,当該財政悪化地域における上下水道やガス・電気を含め社会インフラを維持するための行政予算をどうしても確保できない場合,市町村の統廃合だけでは解決できない問題が存在し続けることになる。
究極的には,上下水道の完備を諦め,(上水道を廃止した上で)井戸や貯水池の復活,(水洗トイレを廃止した上で)汲取り式トイレの復活,(都市ガスを廃止した上で)ボンベによるLPガスの配達への切り替え,(大規模商業施設を抑制した上で)行商方式による移動式小売業の促進によって社会インフラの維持管理のための行政支出をギリギリまで削減することに加え,(長寿社会を断念した上で)ホスピス等の導入を強力に推進する政治的必要性+関連する法改正の必要性が出てくるかもしれない。

なお,経済基盤が存在しなくなってしまったために自治不能な状況下にある地域に関しては,日本国憲法に定める地方自治の本旨の前提となる必須の成立要件が存在しないことになる。
必須の要件を欠くために成立していない対象に関しては,その本旨を論ずることは,(政治的イデオロギーや謀略の一種である場合は別として,少なくとも学術上では)全く無意味なことだ。

これらを踏まえた上で,地方社会の実質が存在するのに法律によって強制的に廃止または停止するのではなく,事実としての地方社会の実質が既に崩壊してしまっているような場合に関しては,理論的には,「消滅」と表現すべきだろうと思う。

一般に,国家や自治体のような社会は,税収によって維持される組織体なので,税収が消滅すれば社会それ自体として崩壊・消滅するしかない。
福祉を含め,全ての施策は,税収の範囲内で賄うしかないので,税収見込みがなくなれば,全ての理想が揮発し,消滅する。理想は理想に過ぎず,現実それ自体とは全く異なる。現実無視の理想論は社会の破壊・自滅を大いに促進する。

政治哲学の分野においては,古代ギリシアにおける「カルネアデスの板」の比喩が常に妥当する。マルサスの『人口論』もその延長線上にあると考えられるし,更には現在の環境学や生態学の理論における基礎も全く同じ。

これらの観念や事象は全て「cybernetics」の理論によって一元的に説明可能だ。しかし,現在の日本国においては,そのように正しく理解できるだけの優秀な頭脳をもつ学者や政治家は滅多にいない。かなり頭が悪いし勉強もしていないのに偉そうなことを口走っている低レベルな評論家のようなタイプの学者は存在する。



 深谷市:鹿島古墳群

 古墳の森:鹿島古墳群



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