群馬県邑楽郡大泉町～千代田町：古海原前古墳群（その１）
過日，古海原前古墳群の所在地（群馬県邑楽郡大泉町古海～群馬県邑楽郡千代田町舞木）を再訪した。この古墳群に属する古墳の中では1号墳だけを既に見学している。
古海原前古墳群を構成する他の古墳も見たいと思っていたのだけれども，正確・詳細な情報を得ることができないでいたところ，たまたま古書店で群馬県邑楽郡大泉町教育委員会編『古海原前古墳群発掘調査概報』（1986年）を見つけることができた。新型コロナの関係で移動制限がある間は我慢し，移動制限が緩和された後にこの古墳群所在地を訪問したのだった。
古海原前古墳群の分布図は，『古海原前古墳群発掘調査概報』の4頁にある。古墳の附番（識別子）は，ここに記されている番号に従うことにする。この報告書それ自体としては，発掘調査が実施された1号墳と2号墳に関する調査報告書であり，（古墳分布図を除いては）他の古墳に関する詳細記述はない。
古海原前23号墳は，古墳群の南端に位置し，直径26m以上の規模の円墳とされている。この古墳は，『群馬県古墳総覧2017年』に記載されている富士原古墳群の8号墳と同一の古墳。墳丘から円筒埴輪が出土しているようだ。
現況は，中島神社（群馬県邑楽郡千代田町舞木）の本殿の基壇部となっている。この古墳は，木花開耶姫を祀る富士塚としても理解されているようだ。
社号標石に刻まれている由緒書によれば，中島神社の鎮座地一帯は古来「中島郷」と呼ばれる場所であり，中島郷の西に位置する字冨士原の浅間神社と中島郷の南に位置する字幡之宮の八幡宮の2祠があり，地元で崇敬されていたところ，明治42年（1909年）にこの2祠を合祀して中島神社と改称したとのことだ。
元の浅間神社と八幡宮の由緒の詳細は不明。現在の中島神社の鎮座地は，旧「幡之宮」の地内ということなので，旧八幡宮の鎮座地だったことになる。
旧「字冨士原」の所在地はわからない。地名からすると，藤原長良と関係する地名と推測される。西の方に位置する古海第二公園の近くには長良神社（群馬県邑楽郡大泉町古海）がある。ちゃんと調べていないので正確ではないかもしれないが，古海原前古墳群の「原前」は「富士原前」という意味をもつものと推定され，また，古海原前古墳群を構成する古墳の多くが富士原古墳群を構成する古墳と同一の古墳であることから，現在の「千代田町舞木」の範囲内が旧「富士原」に該当するのではないかと考えられる。
そして，中島神社の由緒から考えると，中島神社の祭神は誉田別尊（応神天皇）と木花開耶姫（浅間大神）の二柱の神ということになりそうなのだが，現在，八幡宮は，中島神社の境内社という扱いになっている。
結局，何らかの理由により浅間神社を八幡宮鎮座地に移動させざるを得なくなり，合祀と改称という形式を履んだ上で，木花開耶姫（浅間大神）を主祭神とする神社となったということなのではないかと考えられる。
「中島郷」という地名は，奈良時代に「中島将監」という人が住んでいたことにちなむものだそうで，中島神社の北東には，宝亀年間に中島三郎太郎家綱という郷士が住んだという屋敷跡遺跡と呼ばれる場所がある。中島三郎太郎家綱の娘が生んだ子が佐貫荘を長く支配することになったのだそうだ。
この屋敷跡遺跡と呼ばれる場所に関しては，現在では，室町時代～戦国時代のものと理解する見解が普通となっている。佐貫荘を支配した舞木氏の居城とする見解もある。 また，屋敷跡遺跡付近には，古海原前26号墳（直径20～25mの円墳）の所在地ともなっている。古海原前26号墳は既に隠滅した古墳として扱われているのだが，屋敷跡遺跡にある土塁のようなものが古墳の二次利用物である可能性は残る。ただし，そうだとすれば，中島三郎太郎家綱は古墳群の中に屋敷を構えていたことになる。
「中島将監」との名は，職名または家号に近い襲名の一種であり，個人名を示す固有名詞ではないと思われる。個人名のような様式の家号は，現在でも関東地方の各地に存在している。
中島神社及び境内社を参拝した上で，境内地を拝見した。本殿の基壇部は，現在では二段の方墳状に整形されているけれども，元はとても大きな古墳だったのだろうと思う。
中島神社の鳥居
参道
参道（続き）
中島神社拝殿
本殿に登る石段
本殿正面
本殿背面
中島神社の社殿側面
「参明藤開山 角行霊神 食行霊神」碑
「烏帽子磐 元祖 食行身禄霊神」碑
境内社（三峯神社）
境内社（天満宮・白山神社）
境内社（稲荷神社?）
境内社（石尊宮）
奉納碑
墳丘上から見た中島神社境内林（22号墳所在地）
中島神社境内地の東側を通る桜並木に通じる道
（交差点から北東方向を見た様子）
（写真中央桜並木奥が中島将監屋敷跡遺跡所在地）
上州まったり紀行：千代田町舞木・中島神社
神社ぐだぐだ参拝録：中島神社（千代田町舞木）
神社ぐだぐだ参拝録：中島将監屋敷跡（千代田町舞木）
ランキングの項目名はシステムによって自動的に設定される仕様となっており、固定的ではありません。任意の設定ができない仕様になっています。そのため，記事内容と関係のない項目名が示されることがあります。
項目名のアイコンをクリックした場合，PCやスマートフォンの設定をポップアップ広告禁止に設定していないと多数の商業宣伝広告が強制されることがあります。禁止に設定しておけば，商業宣伝広告の表示なしでブラウズできます。ただし，ブラウザによっては禁止設定が自動的に解除されてしまうことがありますので，ご注意ください。
この記事へのコメント