山武市戸田:根崎古墳群(その2)
過日,根崎古墳群(千葉県山武市戸田)を見学した。
根崎12号墳所在地の東約200mのところに小規模な墓地区画が存在する。
この墓地区画内に前方後円墳が1基あり,それと並ぶようにして道路をはさんだ東側に別の前方後円墳が1基ある。これらの古墳は,平岡和夫『千葉県九十九里地域の古墳研究』(平成元年)の77頁及び財団法人山武都市文化財センター編『千葉県山武町胡麻手台古墳群』(1991年)の5頁では,胡麻手台17号墳及び胡麻手台18号墳として記載されている。
また,これらの前方後円墳は,ちば情報マップ(遺跡包蔵地)では根崎古墳群に含まれるものとして扱われている。
このブログ記事では,千葉県文化財保護協会編『千葉県所在古墳詳細分布調査報告書』(平成2年3月)の図25Aに従い,東側の前方後円墳を根崎2号墳と呼び,西側の前方後円墳を根崎1号墳と呼ぶことにする。
なお,根崎2号墳所在地付近は,久保谷遺跡と呼ばれる旧石器時代,縄文時代早期,古墳時代(中期・後期),奈良・平安時代の複合遺跡の遺跡包蔵地ともなっている。
根崎2号墳(『千葉県九十九里地域の古墳研究』及び『千葉県山武町胡麻手台古墳群』における胡麻手台18号墳)は,全長26.0m,後円部径13.0m・後円部高さ2.2m,前方部幅7.0m・前方部高さ1.50mで,前方部を北の方に向けた前方後円墳とされている。
南西の方から見た根崎2号墳
(左手前が前方部・右奥が後円部)
南の方から見た根崎2号墳
(左が前方部・右が後円部)
南東の方から見た根崎2号墳
(左奥が前方部・右手前が後円部)
根崎1号墳(『千葉県九十九里地域の古墳研究』及び『千葉県山武町胡麻手台古墳群』における胡麻手台17号墳)は,全長34.0m,後円部径22.0m・後円部高さ4.0m,前方部幅16.0m・前方部高さ3.50mで,前方部を北の方に向けた前方後円墳とされている。
現況は,そもそも墓地区画の中に墳丘があるためにアクセス可能な場所に大きな制限があり,また,墳丘全体が藪に覆われた状態になっていることから,その墳丘の形状を明瞭に視認できないのだが,一応,記録上の大きさをもつ古墳だということは認識できる。完存していると言える。
根崎1号墳の後円部
根崎1号墳の前方部付近
根崎1号墳及び根崎2号墳の所在地の少し北に十字路交差点がある。
十字路交差点付近にある供養塔
(背後に塚状地形がある)
この十字路交差点の北西側角には2基の円墳が南北に並んでいることになっている。このブログ記事では,『千葉県所在古墳詳細分布調査報告書』(平成2年3月)の図25Aに従い,南側の円墳を根崎3号墳と呼び,北側の円墳を根崎4号墳と呼ぶことにする。
根崎3号墳(『千葉県九十九里地域の古墳研究』及び『千葉県山武町胡麻手台古墳群』における胡麻手台15号墳)は,径14m・高さ3.0mの円墳とされているのだが,もっと大きな古墳のように見える。現況は,墳丘近くまで寄れないような状態となっているものの,道路から墳丘を視認できる。
根崎3号墳
根崎4号墳(『千葉県九十九里地域の古墳研究』及び『千葉県山武町胡麻手台古墳群』における胡麻手台14号墳)は,径16m・高さ2.7mの円墳とされているのだが,かなり疑問がある。現況は,民家の建設により墳丘のかなりの部分が削平されているものの,一応現存していると言える状態にある。道路から墳丘が見える。
根崎4号墳
根崎4号墳所在地付近から東の方に向かって林道を少し入ったところに前方後円墳がある。
この前方後円墳は,『千葉県九十九里地域の古墳研究』の77頁及び『千葉県山武町胡麻手台古墳群』の5頁では胡麻手台13号墳と呼ばれ,全長23.0m,後円部径12.0m・後円部高さ2.3m,前方部幅7.0m・前方部高さ1.3mで,前方部を北西の方に向けた前方後円墳とされている。このブログ記事では,『千葉県所在古墳詳細分布調査報告書』(平成2年3月)の図25Aに従い,根崎5号墳と呼ぶことにする。
根崎5号墳所在地の現況は,資材置場のようになっており,既に隠滅しているように見える。
根崎5号墳所在地付近の現況
根崎5号墳(『千葉県九十九里地域の古墳研究』の77頁及び『千葉県山武町胡麻手台古墳群』の5頁では胡麻手台13号墳)の北に別の前方後円墳がある。
この前方後円墳は,『千葉県九十九里地域の古墳研究』の77頁及び『千葉県山武町胡麻手台古墳群』の5頁では胡麻手台11号墳と呼ばれ,全長30.0m,後円部径19.0m・後円部高さ2.9m,前方部幅16.0m・前方部高さ2.1mで,前方部を北西の方に向けた前方後円墳とされている。このブログ記事では,『千葉県所在古墳詳細分布調査報告書』(平成2年3月)の図25Aに従い,根崎7号墳と呼ぶことにする。
現況は,道路によって一部掘削されてはいるが,現存していると言える状態にある。
根崎7号墳所在地の方に進む林道
西の方から見た根崎7号墳の所在地付近
東の方から見た根崎7号墳
(左手前が後円部・右奥が前方部)
根崎7号墳の後円部墳頂付近から見た前方部
西の方から見た根崎7号墳
(左が前方部・右が後円部)
かつて,根崎7号墳の西側に更に別の前方後円墳(『千葉県九十九里地域の古墳研究』の77頁及び『千葉県山武町胡麻手台古墳群』の5頁では胡麻手台12号墳)があった。
『千葉県所在古墳詳細分布調査報告書』(平成2年3月)の図25Aでは,根崎6号墳となっている。
根崎6号墳所在地の現況は,作業場敷地になっており,完全に隠滅している。
根崎6号墳の所在地付近
加えて,上記の十字路交差点から東約200mのところにも古墳があったらしいのだが,現況では長方形の小規模団地となっているので,仮に古墳所在地だったとしても現在では完全に隠滅しているものと思われる。なお,現況では小規模団地しか存在しないことが予めわかっていたので,現地にはアクセスしていない。この隠滅古墳の附番は不明。
更に,『千葉県所在古墳詳細分布調査報告書』では,根崎1号墳及び根崎2号墳の南に2基の前方後円墳(隠滅古墳)が並んでいたように表示されている。もともと地下遺構しかない古墳だったのかもしれない。この2基の前方後円墳の附番は不明。
以上が根崎古墳群に属する現存古墳の全てということになる。 そして,根崎6号墳の所在地よりも北の方の地区が胡麻手台古墳群の所在地となる。
根崎古墳群の所在地にある古墳は,胡麻手台古墳群の中に含まれない。
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