つくば植物園:マルバマンサクとシナマンサク
2023年1月29日の午後に茨城県植物園を訪問し,アカバナマンサクが開花しているのを目にして,現在の学名(分類)が誤っているのではないかと考え,本日,つくば植物園に出かけてマルバマンサクとシナマンサクを見学してきた。
マルバマンサク(Hamamelis japonica var. obtusata)は,蕾がついていたけれども開花はまだ先のような状態であり,よく見ると1枚だけ枯葉が残っていたとはいえ,基本的には葉が全部落ちているような状態だった。
シナマンサク(Hamamelis mollis)は,ちょうど満開状態。枝には葉がいっぱい残されていた。
アカバナマンサクは,シナマンサクの品種または交配品ではないかと思う。
[追記:2023年2月5日]
下記のボタニックガーデンのサイトでは,茨城県植物園にあるものは人工交配種「Hamamelis ×intermedia」だと書いている。つまり,そもそもマルバマンサク(Hamamelis japonica var. obtusata)の変種または品種ではない。
ハマメリス・インテルメディア (赤花丸葉満作)
しかしながら,茨城県植物園の表示では,そのようにはなっておらず,あくまでも「アカバナマンサク」だと明確に主張している。
こういう場合は,つくば植物園の出番だ。つまり,関連植物の遺伝子を全部調べてその調査結果報告書を公表すればよいのだ。
ちなみに,日本の自生種とされている花卉の中には江戸時代~現代にかけて人為的に作出されたものが多く,もともと野生種ではないものが誤解または錯覚により野生種とされてきたという例が著しく多い。
徳川吉宗の時代以降の新品種作出の歴史については結構細かく調べられているし,その関連の書籍も多数あるのだが,理系の研究者が基本的に「読まない」または「読めない」場合には,根本的な部分で齟齬が生じるのではないかと思う。
そうやって純真な牧野富太郎も騙されたのだろう。
この関連で私自身のお勧めの書籍は,山田慶兒編『東アジアの本草と博物学の世界(上・下)』(思文閣出版,1995年)だ。
同書それ自体がとても素晴らしいのだけれど,同書に記載(参照・引用)されている関連論文や書籍等を全て徹底的に精読・理解すると,普通理解されているのとはかなり異なる世界が眼前に見えてくる。
私の意見に賛成できない人には,とにかく,この書籍で参照・引用されている全ての文献・論文を完全に精読・理解することをお勧めする。普通の教科書に書いてあるレベルのことしか知らないと,普通の(虚偽の表層的な)世界しか見えない。
ちなみに,開花時期が異なる植物をどうやって人工交配するのかという交配技術上の問題はある。
現代では,冷蔵庫という便利な道具がある。
江戸時代においても,花粉を冷蔵保存するために石室や氷室等を利用することは可能だった。更に,新潟県等では,積雪のある冬の期間が長いため,春には一度に多数の植物が一斉に開花する。このため,関東地方では開花時期が異なるために決してあり得ないような受粉を普通に行うことが可能な場合がある。そして,徳川吉宗の時代以降,例えば,新潟県長岡市周辺でも人工交配等による品種改良が積極的に推進されたことが知られている。
加えて,本当は人工交配種であることを知りながら,野生の植物の変種または品種として虚偽の表示により販売する行為は,刑法に定める詐欺罪,景品表示法等の関連法令の条項に従い,処罰され,または,厳格な行政処分を受けることがある。
そのことを知らないで行われる場合でも,損害賠償責任を負うのが相当と(裁判所によって)判断される程度の過失があると認められるときは債務不履行(不完全履行)または不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任の原因となり得る。
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