名取市愛島笠島:賽ノ窪古墳群とその周辺(その1)
過日,賽ノ窪古墳群(宮城県名取市愛島笠島)を見学した。
賽ノ窪古墳群は,名取市の愛島丘陵付近に分布する30基の古墳で構成される大規模な古墳群。
賽ノ窪古墳群の分布範囲が比較的広いので,ちょっとしんどかったけれども,全て徒歩で廻り,アクセス可能な現存古墳を観察し,神社を参拝し,また,近隣の遺跡を見学した。併せて,可能な範囲内で植生調査も実施した。
最初に見学したのは,賽ノ窪14号墳。賽ノ窪14号墳は,茂平塚古墳とも呼ばれ,道祖神社の東約300mのところにある。現況の目測で直径約20mの大きな古墳なのだが,墳丘の西側の一部が掘削されている。
北東の方から見た賽ノ窪14号墳
賽ノ窪14号墳近景
賽ノ窪14号墳の周溝部分?
北西の方から見た賽ノ窪14号墳
賽ノ窪14号墳所在地の南西約100mのところに位置する林内に賽ノ窪15号墳と16号墳が並んでいる。いずれもかなり変形しているように見えるが,どうにか墳丘として識別可能な範囲内にある。
賽ノ窪15号墳所在地の東側にある鉄塔
賽ノ窪15号墳所在地付近
賽ノ窪15号墳と思われる塚状地形部分
賽ノ窪16号墳所在地付近
賽ノ窪16号墳の残存墳丘の一部
賽ノ窪16号墳の道路をはさんだ北西側に賽ノ窪22号墳がある。民家敷地内なので立ち入ることができないが,公道から残存墳丘の一部が見える。
(写真中央付近)
賽ノ窪22号墳の北側に十石上古墳とも呼ばれる賽ノ窪17号墳がある。
賽ノ窪17号墳の規模に関しては,資料によって区々になっており,よくわからない。概ね全長30~40m程度の前方後円墳とされている。本当に前方後円墳なのかどうかも不明。
賽ノ窪17号墳の所在地には標柱が立てられているのだが,長年にわたり文化財保護のための施策が実施されずに放置されているようで,現況は荒地化しており,墳丘を確認することはほぼ不可能。
冬になって草木の葉が全部枯れてしまえば少しは見えるかもしれないけれども,もしかすると既に墳丘が失われている古墳なのではないかと思った。
賽ノ窪17号墳所在地の北に隣接する給水施設のある場所には,かつて賽ノ窪18号墳が存在していた。賽ノ窪18号墳は,現在では完全に湮滅している。
また,賽ノ窪18号墳の北西付近には,かつて賽ノ窪21号墳が存在したようなのだが,現在では完全に湮滅している。
標柱
賽ノ窪17号墳の所在地
賽ノ窪17号墳の北側にある給水施設
(湮滅した賽ノ窪18号墳の所在地)
十石上古墳とも呼ばれる賽ノ窪17号墳の所在地の西側には道祖神社として知られる佐倍乃神社が鎮座している。その道祖神社(佐倍乃神社)の境内地北東角付近が賽ノ窪19号墳の所在地となっている。
そして,賽ノ塚17号墳と賽ノ塚19号墳との間には,宮城県道39号仙台岩沼線が通っている。この道路の全部がそうだというわけではないが,この道路は,道祖神社(佐倍乃神社)近辺に関する限り,古代の東街道とほぼ同じ場所を通っているとする見解が多い。そうであると仮定した場合,古代の東街道を通る者は,山道を登った峠に位置する2つの古墳の間を通ることになる。ただし,古代の東街道の道筋の詳細に関しては複数の説があり,それぞれの説の内部でも自己矛盾のようなものが結構多数あって全面的には依拠できないので,古代の東街道の道筋が全て確定しているわけではない。
賽ノ窪17号墳と賽ノ窪19号墳とは対になっているような関係にあり,両方合わせて峠の関所のような場所だったか,または,両方合わせて一里塚のような目印だったのではないかというような印象を受けた。
賽ノ窪19号墳の所在地は,公道からも見えるので公道から見学し,また,道祖神社(佐倍乃神社)の境内の内側からも見学したけれども,現在では塚状ではなくむしろ凹のような状態になっているので,既に墳丘が失われた古墳ということなのだろうと思う。
北東の方から見た賽ノ窪19号墳所在地付近
南西の方から見た賽ノ窪19号墳所在地付近
道祖神社(佐倍乃神社)の境内地の北側と東側はフェンスで囲われている。境内地の南東側の方に回ると神社入口を示す標識があり,そこから西進すると神社の前に出る。
しかし,この東側から入る道は道祖神社(佐倍乃神社)の表参道ではなく,境内地の南側から石段を登るのが正式の表参道ということになるようだ。
道祖神社(佐倍乃神社)の鳥居のすぐ東側に小さな更地がある。その更地となっている場所付近は,既に湮滅した賽ノ窪25号墳の所在地と思われる。
道祖神社の標柱の所在地
標柱のある場所から入る参道
賽ノ窪25号墳(湮滅)の所在地付近
ところで,賽ノ窪古墳群を見学のために徒歩で移動の途中,不審者監視用と思われる自動車と何度か出逢った。
いつも書くことだが,空き巣狙い窃盗,農作物窃盗,各種金属類の窃盗,賽銭の窃盗が横行する末法の世となってしまっているので,当該自治体等による不審者監視の実施それ自体はやむを得ないことだと考える。
けれども,もっとエレガントにやらないとダメだ。
現状のようなやり方では,まともな観光客に対して不信感と不快感を与え,当該自治体及びその住民の評価・評判を著しく損なう結果となり得る。それでは観光立地など夢のまた夢になってしまう。
しかも,そのような監視者の車両の中には道路交通法違反を公然と実行している車両がある。そのような状況のままでは「危険な地区だ」との定評を与えてしまう危険性がある。
一般論としては,「ちょっと見ればすぐにわかるだろ」というのが私の意見。
一般に,古墳や名所旧跡を見学にくる観光客の存在を理解できない者は監視担当者からどんどん外してしまうべきだ。そのようにしたほうが,いやいやながらも監視担当にされている人も(内心で)ほっとすることだろうと思う。
一般に,犯罪者と非犯罪者を識別する能力などなく,その気もない者に対して不審者監視担当を強制することは,場合によっては憲法違反行為となる。
制度趣旨を正しく理解し,一定の法的素養があり,そして,自ら進んで担当となる者によって構成されるチームとして不審者監視を実施すべきだと思う。
なお,外見から不審者監視車両だろうと判断可能な場合であっても,その運転者等が実は犯罪者グループの一員ということもあり得る。そこで,そのような状況に遭遇すると,必ず当該車両の写真を撮影することにしている。(宮城県の事例ではなく千葉県の事例だが)地域パトロール等の任務に就いていた者が実は重大犯罪の犯人であり,有罪判決を受けたという刑事公判事例が現実に存在する。
必要に応じてネット上のストレージに写真を即時無線転送して記録してしまうことも考えているけれども,これまでのところ,幸いにも神仏の御加護により,そのような差し迫った現実のリスクに直面したことはない。
ちなみに,そのような写真の被写体は公道上で(現行犯として)道路交通法違反状態で駐停車している車両なので,当然のことながら,肖像権もプライバシー権もない。
古墳探訪 大型古墳集成:番外 宮城県の古墳⑩-1 十石上古墳(賽ノ窪古墳群17号墳)
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