古河市中央町:鷹見泉石記念館など

過日,鷹見泉石記念館(茨城県古河市中央町)を見学した。
鷹見泉石記念館は,かつて鷹見家が代々住んだという家屋等を文化財として一般公開している施設。

天性の能力に恵まれた鷹見泉石が古賀藩の格式の高い武士の家の生まれであり,かつ,様々な厄介な仕事を適切にこなすことのできる優れた実務的能力をもち,その結果,藩主から信頼を得ていたことは,とんでもない幸運だったのだと思う。

そのようなことなどを考えながら,古河市歴史博物館内の鷹見泉石関連の展示を見学し,記念館の敷地内を散策した。


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鷹見泉石記念館前の道路


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鷹見泉石記念館入口


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玄関口付近正面


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玄関先付近側面


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屋敷内の様子(一部)


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屋敷内の様子(一部)


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庭の一部


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石灯籠


鷹見泉石記念館の隣地には,繍水草堂(奥原晴湖画室)が移築・展示されている。併せて見学した。


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説明板


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建物の一部


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土蔵を利用したパネル展示室


ときどき,日本国の明治維新後の欧化政策の成功がなぜ成功したのかを考えることがある。

様々な視点から考察可能な検討課題(対象)ではあるけれども,重要な要素の1つとして,江戸時代から既に欧州の文物や社会に関する研究が熱心に行われ,特に医学や技術の分野ではその研究成果が国内研究として若い世代に伝えられるようになっており,更に,オランダ語,フランス語,英語,ドイツ語等を解することができる人材が次第に増えていた状態の下で明治維持となったということをあげることができる。

一般に,十分な下地のないところでは,円滑に異文化を導入することなどできない。

同じようなことは,古墳時代末期にも戦国時代末期にも起きた。

鷹見泉石は,江戸時代後期において欧州の文物や地理を精密に研究した先人の1人。
傑物と言える。
渡辺崋山筆の鷹見泉石の肖像画(国宝)がその姿を現在に伝えている。

渡辺崋山は,蛮社の獄の後に切腹して果てている。私は,凡庸な単なる秀才の一種に過ぎないのに嫉妬心だけ異常に強い凡庸官僚らの嫉妬の犠牲になって死ぬことになってしまったのだと理解している。難しい政策論上の相違や政治思想上の対立によってではなく,嫉妬や偏見や無知のような極めて人間的な要素によって重要な人が殺されてしまうような結果を招くことは,歴史上しばしばあったし,今後もあることだろう。

一般に,単なる秀才というものは,新に有能な人材を見極める能力はあったとしても自分自身にはそのような能力がないことも知っているので,普通の人々よりも激しく嫉妬するものだ。同様のことは,現代の企業社会の中でも日常的に起きる。

私見では,渡辺崋山は,本当は,幕府にとって極めて有用な人材だったと思われるのだが,そのことのゆえにもし渡辺崋山が立身出世を遂げ,国家の采配をふるうようなことになれば,凡庸官僚武士にとっては屈辱の日々となってしまうことだろう。
凡庸な者であるのに嫉妬心だけ異常に強い者の立場からすれば,肩書きや経歴とは無関係の実力主義が導入されることは,ありとあらゆる手段を講じて阻止しなければならない。彼らにとって,真に実力のある者は,単なる敵なのだ。だから,場合によっては,卑劣な手段を使って自殺せざるを得ないような状態に追い込むこともあり得る。
そうしないと,肩書きや経歴以外には誇るべきものがなく,本当は何の実力もない者にとっては立つ瀬がない悲惨な状態となってしまうに違いないからだ。
凡庸でも組織内の枢要な地位にあるのであれば,それだけで十分に幸福な人生なはずなのだが,嫉妬心が強過ぎると餓鬼の世界のような心理状態にはまり,抜け出られなくなるのだ。

一般に,現在では,理論研究,技術,芸術的才能等がばらばらのものに分断されてしまっていることが多く,そのような特技的な特殊能力をもつことが「専門家」の要件であるかのごとく誤解されてしまっている。

しかし,本当はそうではない。

あくまでも一般論としては,森羅万象を極めるために,死する日まで勉学に打ち込み続け,可能な限り広く博物学全般を収めつつ,得意分野に格別に精通している者(だけ)が真の専門家なのだ。

そうはいっても,精神低劣な者らの画策によって命を落としてしまったのでは,学問を収めることなど到底できない。
それゆえ,古来,「能ある鷹は爪を隠す」との格言にもみられるように,当代の人々からは愚者と評価されるような人生をあえて選択することもあるのだ。

ところが,当の本人のプライドが高すぎると,愚者となることができず,結局,命を落とすことになる。



 古河市:鷹見泉石記念館

 古河市観光協会:蘭学者 鷹見泉石



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