水戸市杉崎町:杉崎古墳群(その4)
過日,杉崎古墳群(茨城県水戸市杉崎町)の一部を見学した。
杉崎古墳群を構成する主要残存古墳の分布図は,茨城県教育委員会編『重要遺跡調査報告書Ⅰ』(昭和57年3月)の31頁にある。
他方,内原町史編さん委員会編『内原町の遺跡-内原町遺跡分布調査報告書-』(1994年)の分布図Ⅱ-1に分布図があり,12頁~13頁にその解説がある。
『内原の遺跡』の12~13頁にある解説と上記『重要遺跡調査報告書Ⅰ』の記載とを照合し,予め私製の仮分布図を作成しておき,それに従って古墳群を見学した。私製の仮分布図を作成するに際しては,国土地理院の地図も参照し,詳細データとの突合を行い,道である場所を特定した。
杉崎古墳群所在地の尾根上東側部分の古墳を見学した後,杉崎5号墳の北にある分岐点まで戻り,そこから西の方に進んだ。
湾曲した尾根道の脇には粗大ゴミが大量に不法投棄されていた。この先にはゴルフ場がある。ゴルフ場利用者の健康上の安全は確保されているのだろうか。
また,この山は,水源地となっている。粗大ゴミに含まれる電気製品等には有害物質が含まれているので,不法投棄場所から流れる雨水は,山裾まで届き,水田に影響を及ぼすかもしれないとも考えられ得るのだけれども,大丈夫なのだろうか?
水戸市当局と杉崎地区の農協関係者は,協議の上で,可及的速やかに迅速・適切な対応策を検討し,実施すべきだと思う。
分岐点から西の方に進む道
不法投棄された粗大ゴミ
この場所から道なりに進むと,左手(南側)に円墳のような塚が見えてくる。
非常に難解なのだけれども,この塚状のものは,仮に古墳であるとすれば,杉崎24号墳~杉崎26号墳のいずれかに該当し得ると考えられるけれども,古墳ではなく,建設残土の不法投棄のようなものとも考えられ得る。よくわからない。
近くまで寄ることができないので,道からズームで写真を撮った。
『重要遺跡調査報告書Ⅰ』の解説文の中では,杉崎古墳群を構成する古墳の中で最大の古墳が「内原113号墳」と命名された全長約60mの前方後円墳である旨が記載されている。しかし,この内原113号墳に関しては,現地においてそれらしい地形部分を発見できない。既に湮滅しているのではなかろうか。あるいは,改訂前の古い古墳番号が記されているのかもしれない。
他方,『重要遺跡調査報告書Ⅰ』の分布図では,内原113号墳の西側に比較的大きな円墳が所在するように表示されている。
『内原の遺跡』においては,この場所には杉崎19号墳(内原109号墳)という全長40mの前方後円墳が存在するとされている。
しかし,それらしいものを見つけることができなかった。
杉崎19号墳は既に湮滅したのかもしれないのだが,もし機会があれば,草木の葉が繁っていない季節に再訪し,もう一度よく見てみようと思う。
道の南側にある林内の様子
この道を西進すると,分岐点のようなところに至る。そこから西の方はゴルフ場になっているので,立ち入ることができない。南進しても少し先でゴルフ場敷地になるので,そこから先はやはり立ち入ることができない。そのあたりで引き返すことにした。
以上のような次第なので,杉崎古墳群所在地の西側部分の見学は推奨できない。それだけではなく,西側部分にある古墳の多くが既に消滅していると推測されることから,そんなに遠くない将来,西側部分にある古墳が全て壊滅してしまうのではないかと思った。
これに対し,杉崎古墳群所在地の東側部分にある富士神社(杉崎14号墳)とその周辺は,とても素晴らしい。
この部分に関しては,必要に応じて水戸市が土地を買収するなどし,参道を整備して一般人がもっと容易に杉崎八幡神社の方からアクセスできるようにした上で,史跡公園として整備することが望ましいと考えた。
なにしろ,杉崎14号墳は,この地域の長者だった者を被葬者とする古代の墓所である可能性が高い。
杉崎古墳群にはやたらと立入禁止の表示がある。
これは,かなり古い歴史に原因をもつものかもしれないと思う。例えば,内原町史編さん委員会編『内原町史 通史編』(平成8年)の571~577頁に思索の手掛かりとなる史料の解説がある。
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