水戸市田島町:田島古墳群(その7)

過日,2度にわたり田島古墳群(茨城県水戸市田島町)の所在地を訪問し,見学可能な古墳を見学した。
道のない場所にある古墳等に関しては,最初から見学を断念した。

田島古墳群の分布図は,茨城県教育委員会編『重要遺跡調査報告書Ⅲ』(昭和61年3月)の33頁にある。
他方,内原町市編さん委員会編『内原町の遺跡-内原町遺跡分布調査報告書-』(1994年)の分布図II-1にも古墳分布図があるが,この分布図には古墳番号が付されていない。
そこで,同報告書の5~8頁にある解説と上記『重要遺跡調査報告書Ⅲ』の記載とを照合し,予め私製の仮分布図を作成しておき,それに従って古墳群を見学した。

田島古墳群所在地のある森の北西側出口付近の分岐点から西の方に折れ,左手(南側)に田島23号墳を見ながら道なりに谷地まで降りると,そこから先は道が不明瞭となっている。
かつては,谷地から南の方に降りる道があったようなのだけれども,現在では途中で溜池になってしまっていて道が途切れている。
他方で,谷地から北西の台地の方に登る狭い道があり,少し進むと大きな古墳のある場所に至る。規模から推測して,田島28号墳(直径16m・高さ4.1m)に該当するのだろうと判断した。『内原町の遺跡』の7頁の記述によれば,「前方後円墳の可能性がある」とされている。墳丘の北側に小さな塚状の地形があり,その部分を前方部と理解すれば,確かに前方後円墳または帆立貝式古墳のように見えないことはない。なお,墳丘上には石材が露頭していた。石室の一部かもしれない。


IMG_5719.JPG田島古墳群所在地北西端の出口にある分岐点付近


IMG_4275.JPG田島23号墳所在地付近から北西の方に降りる道


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南の方から見た田島28号墳


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石材の露頭


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同上


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北の方から見た田島28号墳


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西の方から見た田島28号墳
(前方後円墳と仮定した場合,右が後円部・左が前方部?)


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田島28号墳の北側にある小さな塚状地形部分(前方部?)


田島28号墳の所在地から更に北西方向に向かって段丘斜面を登ると,田島26号墳(直径13.4m・高さ1.5mの円墳),田島27号墳(直径13.6m・高さ1.5mの円墳),田島29号墳(直径9.6m・高さ1.5mの円墳),田島30号墳(直径12.4m・高さ1.4mの円墳)が集まっている場所に出る。
明瞭に道になっている部分を進み,立入禁止の表示のあるところから折り返した。
なお,墳丘には登らず,明瞭な道と認められるところだけを歩き,そこから見学した結果に基づいて一応判断したものなので,古墳の同定は,確実であるとは言えない。


IMG_5651.JPG田島27号墳?


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同上


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立入禁止の表示


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田島26号墳?


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同上


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田島29号墳?


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田島30号墳?


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同上


田島古墳群のある森の北西端付近から茨城県道52号石岡城里線に出ると,小さな墓地区画がある。地形から見て,元は古墳だったのではないかと想像した。
そのあたりの路傍には古い供養塔があった。

なお,『内原町の遺跡』の7頁に田島25号墳の解説として「現状は墓地で湮滅」とあるので,もしかするとこの墓地区画が田島25号墳の所在地なのかもしれない。ただ,分布図の所在位置と一致しないという問題がある。所在地表示が(何らかの理由により)誤記であるとすれば,田島25号墳の所在地であり得る。


IMG_4289.JPG茨城県道52号線と墓地区画


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路傍の供養塔


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路傍の供養塔


茨城県道52号線の歩道は狭く,若干怖い思いもしたけれどもそのまま歩道を歩いて南下した。途中で田島31号墳(直径18.5m・高さ2.5mの円墳,南半分が土取りで破壊)の所在地付近を通った。
立入禁止になっているので近くまでアクセスできないのだが,様子から推測すると既に湮滅しているのではないかと思う。


IMG_4294.JPG茨城県道52号線


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田島31号墳所在地付近


そこから更に南下すると,大規模な資材置場のような場所の脇を通る。その資材置場のような場所は田島32号墳~田島36号墳の所在地となっているのだが,現況では全て湮滅になっているのではないかと思われる。立入禁止になっている。
この場所の南東側には「権現塚」とも呼ばれる田島37号墳(直径28.7m・高さ4m)があることになっている。しかし,その場所に至るための道はないようなので,見学を断念した。


IMG_4304.JPG資材置場のような場所の入口付近


田島38号墳(直径12.7m・高さ1.1m)と田島39号墳(直径15m・高さ2mの円墳)の所在地は民家の敷地内のようなので,それらの古墳の所在地には行かなかった。

田島44号墳(直径14m・高さ1.2mの円墳)と田島46号墳(直径6.7m・高さ0.8mの円墳)の所在地は不明。
もしかすると和光院境内地の西側に位置する林内にある土塁の残骸のようなものがそれに該当するのかもしれないが,よくわからない。

田島40号墳~43号墳,田島45号墳,田島47号墳は,現在では,三本松古墳群に属する古墳として扱われている。

田島48号墳,田島49号墳,田島51号墳は,よくわからなかった。

以上のとおり,アクセスできなかった古墳やよくわからなかった古墳もあるけれども,全体としては,非常に良好に保存されている古墳群だと思う。
水戸市当局は,必要に応じて土地を買い上げた上で,安全に通行可能な範囲内に限り,史跡公園として整備したら良いのではないかと思う。牛伏古墳群と比較すると前方後円墳の数が少ないけれども,残存している田島4号墳はとても立派な前方後円墳だし,田島5号墳と田島16号墳はとても大きな円墳なので,古墳群としてはかなり充実した古墳群の部類に入るものだと思う。


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田島古墳群のある山(西側部分)


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田島古墳群のある山(ほぼ全景)



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