足利市立美術館:「足利の歴史と文化再発見! -鎌倉殿の義弟 足利義兼の祈り 大日如来坐像-」

足利市立美術館(栃木県足利市通)で「足利の歴史と文化再発見! -鎌倉殿の義弟 足利義兼の祈り 大日如来坐像-」という展示会が2022年7月30日~10月10日の期間で開催中だというので,見学してきた。

メインの大日如来像は,確かに,好奇心を異常にかきたてるものだった。頭部の様式は,東寺の諸仏と同じ。

建物は美術館なのだけれども,内容的には完全に博物館の展示となっており,特に古墳時代の出土物の展示が素晴らしい。この機会に是非とも実見すべきものが大多数を占めていると思った。写真として既に公開されている出土物も含まれているが,やはり,実物を観察することが最善だと思う。大きさ感や質感や重量感を写真で表現することは難しい。

展示物それ自体はとても素晴らしい。しかし,展示の方法に全く問題がないわけではない。
美術館の館内が全面写真撮影禁止となっているのは仕方がないとしても,その見返りとして販売されている展示カタログの内容がかなり貧弱であり,実際には(実務的にも学術的にも)ほとんど役にたたないという点だ。
これが「足利の現代と文化発見!」ということになるのだろう。

仕方がないので,高額の高速料金とガソリン代をかけてもう一度訪問し,会場内に掲示されている説明を全部筆写してこようと思う。

一般論として,税金によって支えられた公的機関から提供される説明文という方式による情報提供なのだから,(本来は,オープンデータとして)無償で自由にアクセスできるものでなければならないのだが,現実にはそうではないので仕方がない。
公的機関によるオープンデータとしての説明文のネット提供の成功例としては,茨城県石岡市が定期的にネット上でPDFファイルで発行している『石岡を掘る』のシリーズがある。

これらの諸点に関し,法理論上は,(著作権法に定める強制許諾等の関連条項の法解釈を含め)様々な問題が伏在しているのだけれども,専門的になり過ぎるし,上級者レベルで法学全般に精通していない人が部分的にかじると怪我のもととなるので,そのような点について述べることはやめておく。

とはいえ,私のように苦労することになる人は決して稀有ではないと思うので,足利市立美術館としては,会場内に掲示されている説明文を漏れなくWeb公開すべきだと思う。

美術館の屋外(入口前)で展示されているブロンズ像には撮影禁止の表示がないので,美術館を訪問した証拠としてこれらのブロンズ像の写真を撮った。ちなみに,これらのブロンズ像と縄文時代の土偶(例えば,宮畑遺跡出土の土偶)のどちらを好むか,または,どちらを優れていると感じるかは,完全に各自の精神的自由権の範囲内の問題だ。
建物入口付近の写真を撮ろうとすると展示会の掲示が当然に写り込むのだが「無断転載」等が禁止となっているので,面倒なもめごとの発生を避けるため,今回の展示会と関係する要素は一切写真撮影しなかった。
展示会を見学に来たというのに,馬鹿みたいだ。何も記憶に残らないかもしれない。

足利市の責任ある当局者は,茨城県古河市の古河歴史博物館で開催中の企画展「記憶をきりとる写真」を見学し,「本当は何が大事なのか?」「大事なことを実現するためにはどのような方法を考え出すべきか?」を(現代におけるサイバー環境に関して正確な理解を得た上で)真剣に考えるべきだと思う。
無論,「考える能力がない」または「他者の思想は一切参考にしないで唯我独尊を貫く」というのであれば,それはそれで仕方がないことだ。


IMG_6346.JPG藤井浩佑「若い男」


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新井喜惣次「立テル女」


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A. マイヨール「着衣のポモナ」



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