千葉県・香取市:神道山古墳群

過日,香取市にある神道山古墳群を見てきた。香取神社一の鳥居から長く続く参道を見下ろすような小山の上にある。古代の香取海が最大規模の時代には現在の参道の大部分が海中にあったはずで,おそらく,神道山古墳群のある小山の山麓付近に一の鳥居が存在したのに違いない。いわば古代の警備用の砦のようなものだ。

「急傾斜地」のため危険との立札があったので若干不安もあったが,桝原稲荷神社の鳥居のところから登ることにした。この神社の祭神についてはよくわからないのだが,稲荷神社なので,宇迦御魂命(保食神)なのではないかと思う。比較的近いところに「安食」という地名もあり(←「保食」と「安食」は全く同一と考えられる。),香取~佐原周辺では稲荷神社が大きな力をもっていたのだろう。つまり,秦族の地だ。

神道山古墳群


狭く急な上り坂の小道が続く。テラス状に聖地した区画が何か所かある。無理な掘削をしたようで,これでは急傾斜地が崩壊する危険が高まるのも当然のことだと思った。こういう場所は決して掘削してはならない。更に登るとどんどん厳しい坂道になる。

神道山古墳群


しばらく登って,どうにかこうにか山頂に到達。古代には香取海を一望することができだであろう。現代では,眼下に平地が広がり,その向こうに利根川が見える。利根川がこの小山のすぐ近くまで来ており,ずっと遠くまで土地がなく,ただただ海水しか見えない様子をイメージしてみれば,古代の景観を再現することができる。

頂上部分は平坦になっており,正面に半壊した円墳状の墳丘が見える。この墳丘が円墳なのかどうかについては異論もあり,円墳状の部分が後円部でその背後の桝原稲荷神社の現社殿のあるあたりが前方部だという見解もある。私は,前方後円墳だったのだろうと思う。

神道山古墳群


神道山古墳群


この墳丘の正面部分は掘削により崩壊しており,この場所に元は桝原稲荷神社があったのだそうだ。古墳の石室部分を破壊し,玄室に相当する部分に社殿を構築したもののように見える。現状では,小さな石の祠が置いてある。

神道山古墳群


その周辺にかつての神社関連物と思われる石材破片等が散在しており,石碑のようなものも転倒し風化に任されていている。そのほか,周辺には円墳とされる小さな盛り土状の場所が何か所かあるけれども,いずれも風化・崩壊が著しい。全体として手入れが非常に悪く,ほぼ見捨てられ,放棄された土地と考えて良い。

この円墳とされる墳丘の背後に桝原稲荷神社がある。参拝した上で周囲を拝見。社殿の背後にも墳丘状の盛り土のようなものがあり,もし先の円墳が前方後円墳だとすれば前方部の一部ということになるのかもしれないが,一般的には別の円墳の残骸だと考えられているようだ。

桝原稲荷神社


桝原稲荷神社


その奥に続く小路を更に進む。この小山の頂上付近は比較的平坦なので歩きやすい。一応,遊歩道(ハイキングコース)として整備された時期があるらしいのだが,現状は相当荒廃が進んでおり,むしろ危険かもしれない。あまりお勧めできない場所だ。

さて,少し歩くと比較的大きな墳丘が見えてくる。前方後円墳だということが明らかな古墳だ。周囲には竹垣がめぐらせてあるが,これもだいぶ壊れていた。墳丘上にはツツジが植えられており,大きく繁茂していしまっているため,墳丘の形状を正確に観察することができなくなってしまっていた。一体誰がツツジなど植えたのか,公園化計画の妥当性に疑問もあるが,現実には造園業者に丸投げした結果こういうことになったのだろうと思う。古墳ではなく庭園の築山だと考えればツツジを植えるのは自然なことだ。同様の例は,全国各地の古墳でも何例かある。しかし,史跡公園としては妥当ではない。

神道山古墳群


神道山古墳群



  香取市神道山古墳
  http://sgkohun.world.coocan.jp/archive/index.php/katori_sintoz/

  香取市神道山古墳群その他
  http://sgkohun.world.coocan.jp/archive/index.php/katori_sinto/

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  • 桝原稲荷神社と神動山古墳群

    Excerpt: 坂道を登り切ったところに桝原稲荷神社の社がある。隣接して神動山古墳群があり、香取神宮が近いことから神官の墳墓という説も出たが、確認はされていない。 Weblog: ぱふぅ家のホームページ racked: 2018-06-16 18:15