高知県東部物部地域の面

国立歴史民族博物館の神楽のコーナーでは,高知県東部物部地域の面も見た。「物部」と書いて「ものべ」と読むらしい。土佐は,『古事記』では特別な扱いを受けている。何やら古代の巨大自然災害と関係があるのではないかと思う。それにしても異様な面の数々・・・。しばしながめていた。

これらの面は,国立歴史民族博物館所蔵の複製品(レプリカ)ということだ。壁に陳列されているほか,陳列棚の下のほうに置いてあるものもある。

馬面なるものがやけに気になった。どう見ても龍の面のように見える。馬は龍の比喩的表現なのではないかと思う。

物部面
馬面


女面なるものもあった。とても恐ろしい形相をしている。何やら意味ありげな・・・

物部面
女面


面の陳列状況は次のとおりだ。どれも極端にデフォルメされたものばかりで,とても日本の面のようには思えないかもしれないが,日本の面なのだ。ただし,畿内の中央政権の下では抹殺されてしまった伝承文化なのに違いない。何しろ,幕末に至るまで,日本国では,漢が偉く,倭は卑しいものとして蔑視される始末だった。そのような中で,貝原益軒が『大和本草』を書いたという出来事は,幕府による産物国産化政策に基づくものとはいえ,特筆すべきものだろうと思う。ちなみに,漢を貴び,倭を卑しむ文化は現在でも続いている。洋を好み和を敬遠するような文化もまた根は同じだ。ただ,そのようにして新しいものを何でも受容してきたことこそが日本国が世界最長寿国として生き残ることができた最大の要因だったとも考えられる。非常に難しい・・・

物部面
物部面の展示



  歴史系総合誌「歴博」第146号 連載「歴史の証人-写真による収蔵品紹介-」
  http://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/rekihaku/146/witness.html

  国立歴史民族博物館
  https://www.rekihaku.ac.jp/

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