思兼神の面

千葉県佐倉市にある国立歴史民族博物館で,特集展示「中国・四国地方の荒神信仰-いざなぎ流・比婆荒神神楽-」を開催している。過日,見に行った。大きな博物館なので,ちゃんと見学すると1日では足りない。この神楽の面などのコーナーだけでも30分以上かかってしまった。とにかく興味深い。

多数展示されている神楽面の中で,備中神楽面の一つとして展示されていた思兼神面が特に気になった。

思兼神
思兼神


ここで展示されている面は,備中神楽面や石見神楽面など中国地方を中心とする古い神楽で用いられるものだ。

しかし,思兼神は,毛國の歴史と非常に深い関連を有するように思う。

京都・奈良など近畿中心主義の在来の歴史学者には理解したくても全く理解できないことかもしれないが・・・

ところで,世阿弥『風姿花伝』の第四神儀伝には,申楽(猿楽)と能の起源と関連する歴史的事項が延々と書かれている。「申」は「神」のつくりの部分だけを残した文字で,元は「神楽」だったものが「申楽」になったのだという。

備中神楽面では,建御名方神や素戔嗚命がまるで中国の京劇に出てくる悪役のような形相となっている。他方で,大国主命は道教の神というか七福神のような・・・まるで華夏の金満家(長者・太夫)のような顔つきとなっている。「太夫」は「太彦」とも書ける(「太***彦」は「***という名の太夫」と解釈することもできる。)。

謎だらけなのだが・・・これが,歴史の真実を示しているとも考えられる。

建御名方神
建御名方神


素戔嗚命
素戔嗚命


大国主命
大国主命


猿田彦命は・・・やはり天狗のように見えるのだが,既存の観念を全部取り払って冷静に観察してみると,造形的には思兼神に近いような気がする。

猿田彦命
猿田彦命


なお,これらの面は,国立歴史民族博物館所蔵の複製品(レプリカ)ということだ。

ちなみに,母の言うところによれば,私が小さいころ,近所の神社の神楽を見せに連れて行ったところ,最前列でかぶりつき状態になり,いつまでも食い入るように見ており,連れて帰るのにとても苦労したそうだ。まだ5歳前後のことなのだが,何番目かに八岐大蛇が出てきて,それを素戔嗚神が退治するシーンが今でも脳裡に焼き付いている。篝火の中で演じられる何ともドラマチックで至高の藝術の一つだと思う。もし自分が古代人で,演劇的なものといえば1年に1度しか演じられない神楽以外には全く知らないような人間だったとしたら,間違いなく神の存在を信じることになるだろう。結局,そうした小さいころからこういう古代のことを考えるように生まれついていたのかもしれない・・・と,最近つらつら思うようになってきた。


  国立歴史民族博物館
  https://www.rekihaku.ac.jp/

この記事へのコメント

2014年09月05日 09:36
建御名方神の面は日本の物とは思えませんね^^;東南アジアで有りそう・・・・
2014年09月05日 10:01
緑屋さん

ジャワやインドシナ半島の仏教(ヒンヅー教)関連の祭礼面と似た感じがしますね。東大寺の盧舎那仏開眼供養の際には渡来した胡人による様々な舞楽等も奉納されたと史書に記録がありますので,そうした渡来系の舞楽の残滓が神楽の中に含まれている可能性はあるのではないかと思います。

それにしても特異な面だと思います。

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