チョウジソウ

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市営の自然観察林で栽培されているチョウジソウを見た。貴重種・絶滅危惧種だそうだ。どうりで自然の山野で咲いているのを見たことがない。

日本人は比較的花好きの国民ではないかと思う。

公園などに花の咲く草木がたくさん植えられているだけではなく,各人の庭にも,マンションのベランダにも,はたまた部屋の中にも花がいっぱいある。

これだけ花粉症が騒がれているのにもかかわらず花を愛する人の人口はおそらく増加傾向にあるのではないかと推測されるので,空中に浮遊する花粉の総量もどんどん増加するかもしれないというのにである。

しかし,ちょっと考えたいことがある。

それは,園芸店などで売られている花,公園などで好んで植えられる草木の多くが外国のものや品種改良された比較的新しいものであって,日本の在来種ではないことが多いということだ。もちろん,在来種を愛し,そのようなものだけを植えているお庭を拝見したことも何度もある。けれども,どう考えても主流派ではない。

もちろん,私は,個人の自由で,イギリス風にしろフランス風にしろ何にしろどのような好みのガーデニングやフラワーアレンジメントを楽しもうと,それは個人の勝手ではないかと思っている。

しかしながら,税金を使って整備する公園や街路の花は,公共のものなのだ。

そして,公共の場における花をどのような品種のものにするかを決定するのは市長などの自治体首長と議会の役割だ。ここでは,市民としての個人の嗜好を配慮することは当然だとしても,もっと将来を見据えた広い視野からの政策決定が行われなければならない。加えて,個人の財力や能力や努力だけでは保護しきれない絶滅危惧種を含む在来種の保護もまた税金でまかなわれるべき仕事の一つなのではないだろうか?

春を告げる花としてパンジーやクロッカスは可愛らしいし,私も大好きな花だ。しかし,同じ時期に咲く在来種の花もたくさん存在する。パンジーやクロッカスは個人でも購入し栽培することができるが,在来種の中にはそもそも入手できないものが少なくない。

もし公園や街路などに在来種の花が多数咲いていれば,それまでそのような花の存在を知らなかった市民も在来種の美しさを認識するようになるのではないか,そのようにも考えられる。

私は,政治のことにはできるだけ口をはさまないようにしてきたし,今後もそうし続けたいと思っているが,もう少し日本の自然それ自体の保全と日本の絶滅危惧種の保護について,目立つ動植物だけではなく地味で小さな草花やコケなどのレベルでも税金を合理的に配分して妥当な政策決定がなされるべきではないかと考える。

私が訪れた自然観察林では,誰がそのように決断してチョウジソウを栽培することになったのか知らないが,とても良い政策判断だと思った。

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